水質・バクテリア

亜硝酸が魚の呼吸を妨げる仕組みと、塩化物イオンが守ってくれる理由

亜硝酸が魚の呼吸を妨げる仕組みと、塩化物イオンが守ってくれる理由

水槽を立ち上げた直後や、バクテリアが減ったあとに出てくるのが亜硝酸です。魚が水面で口をぱくぱくさせるなどの異変は、水の中の亜硝酸が原因のことがあります。この記事では、養殖の分野でくわしく研究されている亜硝酸の毒性を、Boyd(2014年)の解説をもとに整理します。

運営者が資料を読んでまとめたもので、運営者自身の実験の結果ではありません。資料は主に食用魚の養殖池を対象にしています。水槽にそのまま当てはまるとは限らないので、どこまで言えるかを分けて書きます。

この記事でわかること

  • 亜硝酸は、アンモニアが硝酸塩に変わる途中でできる物質です。
  • 血液の中で酸素を運ぶ色素にくっつき、酸素を運べなくします。血が茶色くなるので「ブラウンブラッド病」と呼ばれます。
  • 毒性は魚種で大きく違います。冷たい水の魚のほうが、暖かい水の魚よりずっと敏感です。
  • 水の中の塩化物イオンが多いと、亜硝酸が体に入りにくくなります。資料では、亜硝酸(窒素)の20倍の塩化物があれば、チャネルキャットフィッシュで毒性を完全に打ち消せるとされています。

亜硝酸はどこから来るのか

硝化細菌がアンモニア性窒素を硝酸にまで酸化する途中で、亜硝酸ができます。水の中の酸素がこれを硝酸にさらに酸化します。バクテリアがまだ十分に育っていない立ち上げ直後は、アンモニアから亜硝酸への変化が先に進み、亜硝酸が一時的にたまりやすくなります(窒素サイクルの記事、立ち上げ初日の記事)。

なぜ毒なのか:血液が酸素を運べなくなる

亜硝酸はえらから血液に入り、ヘモグロビンと結びついてメトヘモグロビンになります。メトヘモグロビンは酸素を運べないため、魚は酸素不足の状態になります。血液が茶色くなることから、ブラウンブラッド病と呼ばれます。えらの傷や筋肉のむくみも起こりますが、主な害は呼吸の妨げです。

この資料では、亜硝酸の少ない水に移すと、魚は短い時間で回復するとされています。

魚種で毒性は大きく違う

Boyd(2014年)の表では、96時間で半数が死ぬ濃度(LC50、亜硝酸態窒素)が、次のように大きく開いています。

種96時間LC50(NO2-N)
ニジマス0.24〜11.0 mg/L
チャネルキャットフィッシュ7.1〜44.0 mg/L
ファットヘッドミノー45.0〜70.0 mg/L

資料は、冷たい水の魚は暖かい水の魚より敏感で、ニジマスはチャネルキャットフィッシュより4倍以上敏感だとしています。熱帯魚の値は、この表にはありません。魚種が違えば、同じ濃度でも影響は変わると考えてください。

塩化物イオンが守ってくれる理由

塩化物イオンは、亜硝酸と電気の性質や大きさがよく似ています。そのため、えらから体に入るときに競い合い、塩化物が多い水では、亜硝酸が血液に入りにくくなります。

資料は、塩化物の濃度が亜硝酸態窒素の濃度の20倍あれば、チャネルキャットフィッシュでは毒性を完全に打ち消せるとしています。そして、ほかのほとんどの淡水魚でも、おそらく同じだとしています。アメリカのナマズ養殖では、塩を加えて塩化物を50〜100 mg/Lに保つことが多いそうです。

水槽の塩浴と比べると

食塩(塩化ナトリウム)の重さのうち、塩化物イオンは約60.7%です。塩化物50 mg/Lは食塩で約82 mg/L、つまり0.008%ほどです。一般的な塩浴の濃度(0.5%=5,000 mg/L)の、約60分の1にあたります。この計算は大きさの比較で、水槽に塩を入れるべきだという意味ではありません。塩に弱い魚、水草、エビや貝もいます。

水温と酸素、塩分でも変わる

  • 水温:温度が高いほど毒性は強くなります。資料では、あるスズキの仲間のLC50が、17℃の274 mg/Lから、27℃の154 mg/Lに下がっています。体が暖かいほど酸素の必要量が増えるためです。
  • 酸素:水の中の酸素が少ないと、毒性は強くなります。資料は、暖かい水の魚で3 mg/L以上、冷たい水の魚で5 mg/L以上を保つよう勧めています。
  • 塩分:塩分が高いほど毒性は弱くなります。ヨーロッパウナギでは、淡水で84 mg/L、塩分36 ppt(海水)で974 mg/Lでした。

水槽で読み替えるときの注意

  • 最初にすることは、酸素と水換え。資料は、酸素が少ないと毒性が強まり、きれいな水に移すと回復が早いとしています。立ち上げ直後に亜硝酸が出たときは、エアレーションを強め、水換えで濃度を下げるのが、資料から言える安全な対応です。
  • 塩の使い方は、飼っている生き物で変わる。資料の対象は、塩に強い食用魚です。水槽の生き物に使うときは、種類ごとの耐性を調べてからにしてください。
  • 単位に注意。資料の濃度は亜硝酸態窒素(NO2-N)です。多くのキットは亜硝酸イオン(NO2)で表示します。NO2-Nの値に約3.29をかけるとNO2の値になります。

参考文献

  1. Boyd, C.E. (2014) Nitrite toxicity affected by species susceptibility, environmental conditions. Global Aquaculture Advocate(Global Seafood Alliance), 2014年1月2日. globalseafood.org

表の数値と、塩化物20倍の記述は、この解説記事からの引用です。食塩と塩化物の換算は、塩素の原子量35.453とNaClの式量58.443から計算しています。

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もーりー

水族館で1年半の飼育業務、アクアショップで3年間の販売業務を経験。お店でよく受けた質問をもとに、飼育で迷いやすい点をまとめています。

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