水質・バクテリア

水温が上がると魚の酸素消費はどう変わる?Q10の考え方と論文の数値

水温が上がると魚の酸素消費はどう変わる?Q10の考え方と論文の数値

この記事は、運営者が論文・公的資料を読んでまとめたもので、運営者自身の実験や飼育経験の結果ではありません。論文は、要旨(概要)で確かめられた内容だけを使っています。

この記事でわかること

  • 水温と、魚が使う酸素の量の関係(Q10という考え方)
  • 多くの魚種を調べた論文で報告されている数値
  • 水温が上がると、水に溶ける酸素の量はどうなるか
  • 水槽に当てはめるときの注意点

魚は水温が上がると、より多くの酸素を使う

魚は変温動物です。体の温度は、まわりの水温とほぼ同じになります。水温が上がると、体の中の化学反応が速くなり、エネルギーを作るために使う酸素も増える、と考えられています。

じっとしているときに必要な最低限のエネルギー消費を、標準代謝率といいます。魚の場合は、酸素をどれだけ取り込んだか(酸素消費量)で調べるのがふつうです。

Q10とは

Q10(キューテン)は、水温が10℃上がったときに、反応の速さが何倍になるかを表す数字です。たとえば Q10 が2なら、水温が10℃上がると酸素消費は2倍になります。Q10 が1.5なら1.5倍です。数字が大きいほど、水温の影響を強く受けることになります。

論文で報告されていること

多くの魚種をまとめた研究(Clarke & Johnston, 1999)

この研究は、硬骨魚類の静止時の酸素消費量を調べた既報の研究を集めて解析したものです。138の研究、69種が対象で、生息する水温の範囲は約40℃にわたります。要旨に書かれている内容は次のとおりです。

  • 体重50 gの魚で比べると、30℃の熱帯の魚は、0℃の極地の魚より、静止時に約6倍の酸素を必要とする。
  • 種をまたいだ解析によるQ10の平均は約1.83。同じ種を水温に慣らして調べた研究のQ10の中央値は約2.40で、それより高い。
  • 著者らは、この差を、進化の中で種ごとの水温への感じやすさが下がった可能性を示すものと解釈している。

同じ種でも集団によって違う(Song ほか, 2019)

北米の海にすむ魚(スポッテッドシートラウト)の、北部と南部の2つの集団を比べた研究です。要旨によると、5〜30℃の範囲で、体重あたりの標準代謝率は北部の集団のほうが高い結果でした。同じ種でも、すんでいた場所によって、水温に対する酸素の使い方が違うことがある、ということです。

水温が上がると、水に溶ける酸素は減る

魚の酸素の使用量が増える一方で、水に溶けている酸素(溶存酸素)の量は、水温が上がると減ります。USGS(米国地質調査所)の解説には、冷たい水は温かい水より多くの溶存酸素を保てる、と書かれています。また、夏や秋は水温が高く、溶存酸素が低くなることが多いとされています。

つまり、水温が高い時期は「魚が必要とする酸素が増える」のに「水に溶けている酸素は減る」という、両方向から余裕が小さくなる状態です。USGSは、自然の水域で、暑く風の弱い日が続くと溶存酸素が少なくなり、魚が多数死ぬことがあるとも述べています。

水槽に当てはめるときの注意

  • 対象の魚が違う。 論文の数値は、多くの魚種(主に自然の水域の魚)を集めた解析と、海の魚(スポッテッドシートラウト)のものです。水槽で飼う熱帯魚・金魚・メダカなどに、同じ倍率が当てはまるとは限りません。
  • 測ったのは静止時の値。 餌を食べた後や、泳ぎ回っているときは、酸素消費はもっと増えます。
  • Q10は目安。 Q10は水温の範囲や魚種によって変わります。「水温が10℃上がれば2倍」と決めつけず、「水温が高いほど酸素の必要量は増える傾向がある」と受け取るのが安全です。
  • 水槽の溶存酸素は水温だけで決まらない。 水面の動き、エアレーション、魚の数、水草の光合成、バクテリアの酸素消費などでも変わります。この記事の論文は、これらを調べたものではありません。
  • 「この水温なら安全」という値は示せない。 論文は、水槽の安全な水温や飼育数を示したものではありません。魚種ごとの適水温は、魚図鑑などの別の情報で確認してください。

参考文献

  1. Clarke A, Johnston NM (1999) Scaling of metabolic rate with body mass and temperature in teleost fish. Journal of Animal Ecology 68(5): 893–905. https://doi.org/10.1046/j.1365-2656.1999.00337.x
  2. Song J, Brill RW, McDowell JR (2019) Plasticity in Standard and Maximum Aerobic Metabolic Rates in Two Populations of an Estuarine Dependent Teleost, Spotted Seatrout (Cynoscion nebulosus). Biology 8(2): 46. https://doi.org/10.3390/biology8020046
  3. U.S. Geological Survey. Dissolved Oxygen and Water. USGS Water Science School. https://www.usgs.gov/special-topics/water-science-school/science/dissolved-oxygen-and-water

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もーりー

水族館で1年半の飼育業務、アクアショップで3年間の販売業務を経験。お店でよく受けた質問をもとに、飼育で迷いやすい点をまとめています。

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